外国人雇用の労働社会保健

外国人労働・社会保険の現状と展望
ここでは以下として、外国人労働者に関するポイントを記載します。
労働保険 = 労災保険 + 雇用保険 |
社会保険 = 健康保険 + 厚生年金保険 |
(1) 労災保険
農林水産業の一部を除き、すべての事業所は労災保険に加入しなければなりません。
国籍は関係ありませんので、外国人も当然に加入させなければなりません。
また、雇用形態・期間も関係ありませんので、例えば資格外活動許可書を持つ留学生をアルバイトとして雇用した場合も対象となります。
不法就労外国人について
不法就労外国人が、労災給付の申請をしても、原則として労基署が入国管理局に通報することはありません。
ただし、以下の場合は通報されます。(平成元10.31基監発台31号)
1. その不法労働外国人に関して、重大な労働基準関係法令違反が認められた場合
2.その不法就労外国人の使用者等に関して、労働基準関係法令違反が認められ、司法処分や使用停止等命令が行われた場合
3. 多数の不法就労外国人が雇用されている事業場があり、それらの不法就労外国人の使用者等について労働基準関係法令違反が行われる恐れがある場合
(2) 雇用保険
日本人と同じく、農林水産業の一部を除き、1人でも労働者を雇用する事業所は雇用保険の適用事業となります。 雇用保険に加入できない労働者も、以下の通り、日本人と同じです。
@ 昼間の大学、専門学校等に通学しながら、アルバイトをしている者
A 4カ月以内の季節的事業に雇用されている者
B 65歳に達した日以後新たに雇用される者
C 1週間あたりの所定労働時間が20時間未満の者
失業給付のもらい方も日本人と同じですが、外国人労働者の場合、少し事情が異なります。
次の就職が見つからなければ就労していない、つまり就労ビザの資格として活動していないことになり、うかうかしていると在留資格取消事由に該当してしまいます。
自己都合で退職した場合でも、3カ月の待機期間を待たずに再就職することがほとんどですので、外国人労働者は雇用保険の加入を嫌がる傾向があります。
それでも再就職手当の支給もあることや会社都合の場合に備えて、外国人労働者にもメリットがあることを説明して、加入義務をきちんと説明してください。
(3) 健康保険
すべての法人事業所と常時5人以上が働いている適用業種は、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)の対象であり、当然に外国人も含まれていることは労働保険と同じです。また、外国人の在留資格変更許可および在留期間更新許可の申請の際には、入国管理局で社会保険証の提示が求められます。
健康保険による外国にいる家族への給付
日本人と同じ制度ですので、健康保険では、加入している外国人労働者本人(被保険者)だけでなく、外国人労働者の母国にいる家族も一定の要件を満たせば、被扶養者として給付を受けることができます。
母国の家族が、その健康保険証を使って日本で治療を受けることができます。
母国で治療を受けた場合、いったん費用全額を支払い、日本にいる外国人労働者が以下の書類を準備して、社会保険事務所に提出すると、日本国内にある外国人労働者名義の銀行口座に振り込まれます。
尚、日本での療養費に比べて母国の療養費が安い場合はその金額、高い場合は日本で相当する療養費の額になります。
1. 療養費支給請求書
2. 医師の診療明細書(翻訳者の氏名・住所の記載のある翻訳文が必要)
3. 領収書
4. 振込先銀行の口座番号
5. 印鑑
(4) 厚生年金保険
社会保険のひとつである厚生年金保険についても健康保険と同じく、日本人労働者と外国人労働者に区別はありませんが、外国人労働者の厚生年金保険の適用免除について記載します。
@ 社会保障協定
日本で就労する外国人労働者が、日本と母国での年金の二重加入や、保険料掛捨ての問題を解消するために、日本は、次の国々と社会保障協定という条約を締結しています。
アメリカ |
カナダ |
イギリス |
ドイツ |
フランス |
オランダ |
ベルギー |
チェコ |
オーストラリア |
韓国 |
A 母国か日本のどちらの社会保障制度に加入するの?
1.協定相手国の事業所から派遣される外国人
(a)5年以内と見込まれる一時派遣
日本での加入は免除され、引き続き母国の社会保障制度に加入します。
外国の事業所が、その実施機関に適用証明書を申請し、交付を受けます。
外国人労働者は適用証明書を持参して来日し、日本の就労事業所に提出します。
日本の就労事業所は、社会保険事務所からの問い合わせに対して、この適用証明書を提示すればOKです。
(b)予見できない事情により5年を超える場合
派遣期間が5年以内の予定でも、ビジネスの必要性から5年を超えてしまうこともあるでしょう。
この場合は、原則として日本の社会保障制度に加入しますが、両国の合意により、協定相手国の社会保保障制度に加入します。
(c)5年を超えると見込まれる長期派遣
日本の社会保障制度に加入します。
日本の事業所が、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格取得届を社会保険事務所に提出します。
2.日本で現地採用される外国人
日本の社会保障制度に加入します。
日本の事業所が、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格取得届を社会保険事務所に提出します。
B 日本での厚生年金保険の請求手続き
1. 年金加入期間を通算する方法
協定締結により、現在、日本に在住している外国人は、従来、協定相手国で加入していた年金と通算して請求することができるようになりました。
日本の社会保険事務所または年金相談センターに年金申請書を提出します。
2. 協定相手国の年金を請求する方法
外国人が、日本国内で、協定相手国の年金受給を請求する場合は、協定相手国の年金申請書などの必要書類を、日本の社会保険事務所または年金相談センターに年金申請書を提出します。
3. 協定相手国で年金を請求する方法
日本国内で勤務していた年金加入期間が必要な場合、保険期間確認請求書を揃えて、協定相手国内の担当機関に年金申請書を提出します。
4. 日本で一緒に暮らす配偶者と子供の取扱い
日本に居住する外国人労働者(20歳〜60歳)も、原則として国籍・在留期間に関係なく、すべて国民年金の被保険者とされます。
しかし、外国人労働者が一時的な派遣のため社会保障制度への加入が免除される場合は、随伴して日本国内に居住する配偶者と子供も同様に加入免除となります。
C 脱退一時金の支給
外国人労働者が、厚生年金保険(または国民年金)に加入し保険料を支払ったにもかかわらず、年金の受給権を得ないまま帰国した場合には、脱退一時金が支給されます。
1. 支給要件
* 日本国籍を有していないこと
* 被保険者期間(保険料の支払い)が6カ月以上であること
* 帰国後2年以内に請求する事
* 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと
* 障害厚生年金などの受給権を有したことがないこと
2. 脱退一時金の額
平均標準報酬額 x 支給率{(保険料率x1/2)x被保険者期間月数に応じた数}
3. 請求方法
帰国前に、社会保険事務所や年金相談センターで請求書を入手して、日本から出国後2年以内に、日本の管轄社会保険事務所に請求します。
4. 期間通算と脱退一時金の選択
外国人労働者の母国が日本と社会保障協定を締結している場合、以下の選択をすることが出来ます。
* 将来、加入通算により年金をもらう
* 脱退一時金をもらう