海外進出する場合、貿易実務での決済

貿易実務 その2
これから自社にて輸出入を手掛けられる会社の皆様のみならず、海外製品を取扱っているが貿易商社にお任せしている会社の皆様も、貿易実務の基本をご理解いただけるように説明させていただきます。
L/Cでの決済国内取引では、売主は買主の信用調査や取引経験などにより掛売りが中心ですが、海外取引の場合、売主(輸出者)にとって、代金回収は死活問題となります。
逆に買主(輸入者)にとって、荷物の確保前に送金するような無謀な行為はできません。
そこで、最も一般的な信用状(Letter of Credit = L/C)決済の押さえておくべきポイントを説明させていただきます。
(1) 必要書類
売主は、荷物を手配して本船へ乗せるとともに必要書類を作成して、通知銀行に提出しなければL/Cを決済、つまり現金化することができません。
代表的な書類は以下の通りです。
@ インボイス(Invoice) 必須
荷物の内容(製品名や機種番号など)、数量、単価、総額などを記載した送り状です。
A パッキングリスト(Packing List) 必須
荷物の寸法や重量などを記載した梱包明細書です。
B 船荷証券(Bill of Lading = B/L) 必須
船会社などが発行する、荷物が本船に乗せたことを証明する有価証券です。
つまり、売主がB/Lを提出することにより、FOBでの引渡し条件を完了したことを証明することができます。
C 原産地証明書(Certificate of Origin)
商工会議所などが発行する、輸出される製品の原産地国を証明する書類です。
日本製品を輸出する場合は、Made in Japan のお墨付きとなりますので、まず買主は要求してきますが、海外製品を輸入する場合、必ずしも必要ではありません。
D その他
輸出入とも相手国の規則や商慣習によりケースバイケースです。
(2) 期限
L/Cには、2つの大きな期限があります。
@ 船積期限
「Shipment not later than」と記載されていることが多いようですが、何年何月何日までに船積みをしなければならない、という意味です
B/Lには本船出航日、「B/L Date」が記載されますが、L/Cに記載された船積期限までに(当日はOK)「B/L Date」を確保できるように、売主は荷物の手配を行わなければなりません。
A 信用上期限
「L/C Expiry」や「L/C Validity」と記載されている通り、その期日までに必要書類しなければL/Cが失効してしまいます。
売主は、銀行の処理日数と休日なども考慮に入れておく必要があります。
B Stale B/L
直訳すると、新鮮でないB/Lとなりますが、上記2つの期限内の書類を提出しても、何らかの事情でB/L Dateから21日経過するとStale B/Lとなり、銀行は受け付けてくれませんので、ご注意ください。
(3) 分割船積み
「Partial Shipment」の項目ですが、分割船積みが許可されているでしょうか?
@ 禁止
買主にとって輸入する製品などの一部が不足していれば契約そのものが意味のない場合、分割船積みを禁止しておきます。
A 許可
例えば、買主が冷蔵庫を100台輸入しようと信用状を開設したとします。
売主は冷蔵庫を100台手配しましたが、工場での生産で良品が99台しか出来なかった場合、分割船積みが禁止の場合、売主は船積みをすることが出来ません。
買主にとって1台くらいの不足であれば全く問題がない場合、分割船積みを許可しておくと実益があります。
もちろん、信用状で決済される金額は99台分のみです。
その他の決済方法
@ D/P
「Document against Payment」の略です。
船積後、売主がインボイスやB/Lなどの書類を銀行に提出し、銀行は買主が代金を支払った後に書類を買主に渡します。
売主にとっては、買主が銀行に代金を支払わない以上、決済ができないというリスクがあります。
A D/A
「Document against Acceptance」の略です。
D/Pと同じ流れですが、買主が銀行に代金を支払うことを約束すれば、銀行は買主に書類を渡します。
つまり、代金決済の前に買主は荷物を引取ることになり、売主にとっては更にリスクの高い決済条件です。
国内取引の掛売りと似ていますが、買主が海外にいる以上、債務不履行が起こった場合、代金の回収は困難を極めます。
B T/T
「Telegraphic Transfer」電信送金の略です。
信用状決済に比べて手間もかからず、経費も抑えることができますので、海外支店・工場との同社内や子会社間の決済や、信頼関係が構築された売主への決済に用いられることが多いようです。
当然ですが、船積前に全額の送金を受けられれば、売主にとってはベストの方法です。
乙仲業務
輸出にせよ、輸入にせよ、実際の湾口施設での荷物の取り扱いや税関への通関業務は、免許を受けた乙仲業者が取扱います。
一般企業が出来る訳ではありません。 スムーズな輸出入のためには、信頼できる乙仲業者と提携することがポイントといっても過言ではないでしょう。