海外進出をする場合の貿易実務

貿易実務 その1
これから自社にて輸出入を手掛けられる会社の皆様のみならず、海外製品を取扱っているが貿易商社にお任せしている会社の皆様も、貿易実務の基本をご理解いただけるように説明させていただきます。
引渡条件ビジネスでは商品の単価はもっとも重要な取り決めですが、輸出入においては同時に引渡条件がポイントとなります。
基本中の基本のFOBと、FOBをベースとしたC&FとCIFを理解いただければ十分です。
(1) FOB (エフオービー)
「Free On Board」の略ですが、日本語に訳すると「本船甲板渡し条件」となります。
しかし、FOBを日本語訳で使う人は見かけたことがないほど、FOBは日本中、世界中で通用します。
FOB契約では、売主(輸出者)が荷物を本船に積み込むまでの費用と責任を負担しますが、荷物が本船に積み込まれたと同時に、荷物の所有権と危険負担が、一挙に売主から買主(輸入者)に移ります。
従って、海上運賃、海上保険、及び輸入経費などは買主が負担することになります。
この「Free」を「無料」と訳してしまうと混乱してしまいます。
この「Free」は「〜解放される」という意味で、「On Board」は「甲板の上」という意味です。
荷物が本船の甲板に乗った瞬間から売主は責任から解放される、つまり契約を履行した、と理解していただければよいかと思います。
尚、本船は船に限りません。飛行機でもOKですし、日本は島国ゆえ馴染みがありませんが、大陸ではトラックの場合でも本船に当たります。
(2) C&F (シーアンドエフ)
「Cost and Freight」の略ですが、「C」が表す「コスト」は何でしょうか? 答は簡単、「C=FOB」です。
つまり、FOB契約をベースにして売主が運賃を負担することです。
国内取引では、売主が運賃を負担する場合、民法の持参債務に基づき、荷物が買主に届くまで売主が責任を負います。
しかし、C&F契約は、あくまでFOB(=C)に運賃(F=Freight)を加えただけであり、たとえ荷物が買主に届かなくても、売主が荷物を本船に乗せたならば売主は責任を問われることがない点を、明確にしてください。
尚、「C&F」は「CFR」とも「CNF」とも表記しますが、意味は全く同じです。
(3) CIF (シーアイエフ)
「Cost Insurance Freight」の略ですが、もうお分かりの通り、「C=FOB」と「F=Freight(運賃)」に「I=Insurance(保険)」を加えた契約です。
従って、売主が運賃と保険を負担しますが、売主の引渡し条件はあくまでFOB契約です。
保険について補足しますと、輸出港から輸入港まででなく、保険適用の起点を売主(輸出者)の工場から、終点を買主(輸入者)の倉庫までとすることも可能なようです。
具体的には各保険会社にお問合せください。